共同研究「日本のソーシャルワーク研究に関する包括的研究~理論研究の形成過程、実践との相互影響に焦点を当てて~」参加会員の募集
日本ソーシャルワーク学会共同研究
日本のソーシャルワーク研究に関する包括的研究~
理論研究の形成過程、実践との相互影響に焦点を当てて~
- ◇概要
- 日本のソーシャルワーカー制度の発展について考えた時、1980年代以降の社会福祉士及び精神保健福祉士(以下、両士)制度が創設されたことの意義は大きい。そして「両士」の社会的位置づけが明確になるに伴い、その活躍の場はスクールソーシャルワークや刑務所出所者への支援等、従来の福祉法制の範囲を超えた領域へと拡大しつつある。こういった流れを受けてソーシャルワーク研究は、従来の理念や原則に関する総論的研究から、具体的分野に関わる「個別的」な事例の蓄積や各論的研究に焦点が移ってきた。そのことの意義は大きい。例えばこの段階に至って、ソーシャルワーク実践の「評価」が可能となってきたともいえるのである。
- しかしこのことは、ソーシャルワークに関する基盤的研究がなおざりにされて良いということにはならない。例えばソーシャルワークは、その形成の当初より哲学や社会学等の他学問の影響を受け、また看護や教育といった隣接領域の対人援助学との相互影響の下に発展してきた。そして、分野を超えた「ソーシャルワークと何か」という問いへの答えを模索しつつげてきているのである。ソーシャルワーカーが他領域に進出していく時代であるからこそ、ソーシャルワーク理論の基盤となるべき「共通性」を確認していく作業が必要になる。そうでなければ、教育、司法等の隣接領域にソーシャルワークが取り込まれ、その「固有性」が曖昧になってしまいかねない。ソーシャルワークの固有性を追究しつつ、さらには隣接領域の発展に貢献するために、ソーシャルワークの「普遍性」についても探究していくことが期待されるのである。
- 本共同研究はこのような問題意識を踏まえ、日本のソーシャルワーク研究を、俯瞰的・包括的な視点で改めて、整理検討していこうとするものである。
- ◇目標
- 以下について共同研究を行う。
- ソーシャルワーク理論と実践の循環的関係について
- 教育、司法等に広がりを見せるソーシャルワークの研究領域の形成過程について
- 哲学、社会学等の他学問がソーシャルワーク研究に与えた影響について
- 看護、教育等の隣接の対人援助専門職との研究上の相互関係について(決してソーシャルワークが影響を受けるだけの関係ではないはずである)
- 実習教育を中心とする養成教育がソーシャルワーク実践及び理論に与えた影響について
- その他
- ◇具体的な作業
- 各メンバーが関心に応じて、上記枠組みの中から主テーマ、副テーマを選び、個人研究と他メンバーのサポートを行う。そして、さらに全メンバーによる共同研究へとつなぎ、研究成果を発表していく。そして最終的には共同研究の成果として、ソーシャルワーク研究に関する「年表」「データベース」といったプロダクトも作り出していきたい。そのプロセスにおいてはソーシャルワークの歴史を超えた普遍性と可変性の両者に焦点を当てることを大切にしたい。
- ◇連絡先
- 同志社大学 小山隆 tkoyama@mail.doshisha.ac.jp