児童養護施設において性(生)はどのように語られているのか
直接処遇職員と子どもの関わりに着目して
木原 琴
和文抄録
児童養護施設における性は,性的問題行動が着目され,職員が行う生活の中での子どもの性(生)(以下,性)の育みへの着目が不足している.本研究では,問題とまで発展していない性全般にまつわる事柄も含めた性への職員の考えや対応を把握した.性のあり方を捉えるために,概念的枠組みとして「隠れたカリキュラム」を用い,発生構造を分析した.参与観察と面接により,性は,施設に入所する子ども特有の背景や立場への職員の意識,職員特有の立場,集団養育・施設生活を背景とした「フィルター」を通して語られることが示唆された.それは,性は典型的な枠にはまるべき,避けるべき,躊躇や葛藤が伴い,抑圧され得るとの認識を子どもに与え得る.これらは,被虐待経験等や,措置され施設にて職員に集団養育されているという弱くされた立場を子どもに想起させる.この言説が,性の独自性や多様性の表現を困難とする保護や管理の視点の強化へと繋がると論じた.
ソーシャルワーク学会誌第47 号1-15 2023 本文(PDF:1.08MB)
『ソーシャルワーク学会誌』第47号(2023年12月)に戻る